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鈴木エイト氏の活動が重要な理由

路上勧誘阻止活動からジャーナリストへ

 鈴木エイト氏は、2002年から、統一教会信者が正体を隠して街頭で通行人を勧誘する現場に介入し、勧誘されている人に対してそれが統一教会であることを知らせる活動をしていました。
 私がエイト氏と出会ったの2009年頃、統一教会はすでに社会的に問題のある存在でしたが、その活動現場の実情を追っているジャーナリストはいませんでした。そうした中で、エイト氏による街頭勧誘阻止活動は、それ自体が勧誘現場の最新の状況を知る調査・取材活動として非常に貴重に思えました。
 そこで私は、2009年にウェブサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊するにあたって、エイト氏に参加してもらいました。やがてエイト氏は、他の紙媒体でも記事を書くようになり、2019年からはハーバー・ビジネス・オンラインで「政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係」の連載を始めます。
 これが、安倍晋三元首相殺害事件後に発刊された『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』のベースになっています。

名を売ることより報じることに徹してきた

 やや日刊カルト新聞は創刊当初、GoogleAdSenseの広告を収入源として取材費を捻出していましたが、すぐにGoogleから広告を遮断され、取材は全て自腹となりました。もちろん原稿料等も出ません。もともとカルト問題以外についても記事を書くライターだった藤倉とは違い、エイト氏が一般メディアで記事を書ける機会は、それを正業とできるほど多くはありませんでした。
 それでもエイト氏は、取材し、記事を書き続けました。いまでこそ著名なジャーナリストになりましたが、彼は、そうならなくともこうした活動を続けていたと思います。
 よく、エイト氏が統一教会や政治家からの取材妨害や報復を受けながら取材を続けてきたことを称賛する声を耳にします。そんなことは本来、ジャーナリストなら当たり前のことです。他人から見えるかどうかの違いであって、ほぼ全てと言っていいほどのジャーナリストがそうしています。
 しかし原稿料を稼げなければ、どんなジャーナリストでも活動継続は困難です。それでも続けてきた点が、エイト氏の最も称賛すべき点ではないかと思います。

メディアのポテンシャルに期待する

 安倍晋三元首相殺害事件以降、エイト氏は、自身が統一教会問題について発信するだけでなく、各メディア独自の報道も誘発させました。
 事件直後、エイト氏がまずやったことは、それまで蓄積してきた国会議員100人以上と統一教会との関係を示すデータベースをメディアにばら撒くことでした。「謝礼不要。クレジット不要。それぞれに裏とりや補足をするなり何なり、自由に活用して下さい」との趣旨を添えて、です。
 「独自ネタの独占」にこだわらない、従来のジャーナリストには珍しい手法です。そしてこれは、「統一教会と接点がある国会議員が、こんなにいるのか」「もっと調べればもっと出てくるのではないか」という感触をメディアに知ってもらう効果を存分に発揮しました。
 各メディアによる独自調査も活発化し、各政党による調査も、十分とは言えない党もあるとは言え、行われました。地方メディアにいよる地方議員や首長についての調査も同様です。こうして、エイト氏の当初のデータよりはるかに多くの国会議員と統一教会と接点が明らかになりました。
 一般メディアが長年、統一教会問題に目を向けてこなかった点は、確かに問題があります。しかしそれでも、エイト氏は報道の意義、メディアの問題意識やポテンシャルに期待をかけました。それが、統一教会問題に関する日本の報道状況を一変させるきっかけになりました。

信者の人権を尊重するスタンス

 もう一つ、注目すべきは、エイト氏が決して、激しく糾弾することで耳目を集めようとするYouTuber的な手法やスタンスを取っていないことです。取材現場では、信者側が反発して揉め事に発展するケースもなくはありませんが、エイト氏自身は信者たちに思いやりを持って接しようとします。友好的に会話をすることもあれば、何なら一緒にご飯を食べに行ったりすることもあります。
 エイト氏自身、この点について「カルト問題においては、(他者を巻き込もうとする)加害者もまた被害者であるという構造があるからだ」と語っています。傍目に見てきた印象では、彼のこうした姿勢は勧誘阻止活動からジャーナリスト活動に転じて以降、より鮮明になったように思えます。
 一見、エイト氏は他人がやらないほどの批判的姿勢を持っている印象を受けるかもしれません。しかし実際には、信者の人権も尊重しつつ「叩くことよりまず人々に伝えること」を重視する、実は極めてオーソドックスなジャーナリズムのスタイルをとってきました。

今回の訴訟の背景

 今回、エイト氏は統一教会信者の後藤徹氏と関連団体「天宙平和連合(UFP)」の日本支部である「UFP-Japan」から提訴されました。
 後藤氏は、提訴の記者会見で、自身が行っている「(統一教会信者の)拉致監禁問題」
についての活動が統一教会からの業務委託を受けてのものと認めています。
 「拉致監禁問題」は、統一教会を批判する側が信者を拉致監禁して強制改宗させていると統一教会側が主張しているものです。この問題は、過去に統一教会を批判する一部の人々によって行われた問題行為として、検証・総括されるべきと私は考えています。入信した子供をそこまでして説得しなければならなかった家族たちの事情も含めて、カルト問題への取り組みのあり方を考えさせられるテーマです。
 しかしいずれにせよ、この問題は、統一教会に対する批判や解散命令(文科省が東京地裁に請求中)
、被害者救済のための法整備の必要といった、社会の側の目下の課題とは関係がありません。統一教会が社会や個々の人々にもたらし続けてきた害悪を相殺するものではないからです。
 にも関わらず統一教会、信者、擁護的な人たちは、統一教会を被害者であるかのように社会に印象づけるために「拉致監禁問題」を繰り返しアピールしています。エイト氏に対する訴訟も、その一環と考えられます。

ジャーナリストに対するSLAPP

 また今回の訴訟は、エイト氏の発信の萎縮あるいは活動の圧迫を意識したものと言えます。一般的に、萎縮効果などを狙って起こす訴訟は、「SLAPP」と呼ばれます。日本にはこれを抑止する法律や制度がありません。
 特に名誉毀損を理由とした訴訟では、訴えられた側が自身の発言等の正しさを証明する必要があることから、膨大な量の証拠や書面の作成を要します。当然、そのための経費も弁護士費用も、もちろん時間も費やさなければなりません。
 これが、SLAPPを起こす側にとっての大きなメリットです。裁判の勝ち負けがどうであろうと、相手を疲弊させることができます。エイト氏が自身の発信を萎縮させるつもりが一切なくても、時間や労力やお金を費やさざるを得なくなれば、本来の取材や発信活動は圧迫されます。

エイト氏の活動を守るために

 

 統一教会問題は何一つ解決していません。解散命令でも、金銭被害や2世問題への社会的な取り組みを進める上でも、殺害された安倍元首相も含め政治家と統一教会との関わりを検証・総括する上でも、エイト氏の活動は欠かせません。
 日本の報道環境にまで一石を投じたエイト氏が、今後も本来の活動に専念できるよう、ぜひご支援のほど、よろしくお願いいたします。

2023年11月27日

鈴木エイト氏を支える会

代表・藤倉善郎

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